M1グランプリ2018決勝が2018年12月2日(日)に放送され、霜降り明星の優勝で幕を閉じました。

早速、M1決勝からファイナルへの流れを振り返っていきたいと思います。

M1グランプリ2018 決勝進出8組+敗者復活1組の感想は?

M1グランプリ2018年決勝も例年同様、事前発表された8組と敗者復活1組の全9組で争われました。

決勝進出8組+敗者復活1枠は以下のとおりです(ネタ順)

  1. 見取り図
  2. スーパーマラドーナ
  3. かまいたち
  4. ジャルジャル
  5. ギャロップ
  6. ユニバース
  7. ミキ(敗者復活)
  8. トム・ブラウン
  9. 霜降り明星
  10. 和牛

10組の中でコンビ結成15年目のM1ラストイヤーとなるのはスーパーマラドーナ、ギャロップ、ジャルジャルの3組です。

ラストイヤーのコンビの中には優勝候補として前評判の高いスーパーマラドーナ、ジャルジャルの2組がいます。

果たして有終の美を飾れるのか注目です。

M1グランプリ2018年の予選スタート。

M1グランプリは出場順がかなり評価に影響を与え、そのあたりもシビアです。

特にトップバッターはその後のコンビのネタの基準点となるため毎年必ず低めの点数が付きます。

2018年のトップバッターを引いた見取り図は、「それ誰!?」というような人物を次々に引き合いに出してくるちょっとわかりづらいボケで得点が606点とあまり伸びません。

見取り図がそこまで面白くなかったため、事前予想では優勝候補とまで言われていた2番目のスーパーマラドーナにとっては有利な展開です。

スーパーマラドーナは「サイコな隣人」というネタで来ましたが、二人共サイコという設定でネタ全体を通してあまりにサイコ感が強すぎたために面白さが半減し得点が617点と伸びません。

審査員の松本人志に「何でラストイヤーにこんな暗いネタ持ってきたん?」と言われ二人は肩を落としていました。

1番目、2番目がスベったため、3番目の「かまいたち」にとってはかなり有利な展開です。

「タイムマシンで過去に戻って1回やりなおせるとしたら」というネタを繰り出します。

「告白できなかった女の子に告白する」という濱家に対して山内は「作れなかったポイントカードを作る」のゴリ押しで笑いを取ります。

二人の白熱した掛け合いは過去の優勝者のブラックマヨネーズを彷彿とさせるものがあり636点と高得点を叩き出します。

さすがはキングオブコント優勝者の面目躍如と言うべきでしょう。

4番目のジャルジャルはウケた「かまいたち」の後だっただけに厳しいかと思われましたが、子供の頃にやった架空の遊び「国名分けっこ」というジャルジャルらしいオリジナリティのある挑戦的なネタを繰り出します。

内容は非常にくだらないんだけども掛け合いのテンポ、繰り返し&音感の面白さで、ハマる人はどハマりするであろう中毒性の高いネタで648点と高得点を叩き出します。

しかし斬新過ぎるネタは上沼恵美子には不評だったようで88点という低評価でした。

かまいたち、ジャルジャルと高得点を出したコンビの後のギャロップは向かい風の厳しい順番です。

全体を通して抑揚の無い普段の劇場のネタのような感じで滑ります。

例えると、正装する場所に一人だけラフな私服で来てしまった時のような場違いな気恥ずかしさが残るネタと言いましょうか。

審査員にも一本調子のネタ、M1のネタじゃないと酷評を受け614点と下位に沈みます。

ギャロップにとっては不本意なラストイヤーとなってしまいました。

滑ったギャロップの後のユニバースは流れ的に有利だったはずですが、ギャロップ以上に見どころが何も無く滑りまくります。

594点と600点台を切る得点が付いたのは決勝進出者の中でユニバースだけでした。

前の2組が滑り倒した後の敗者復活枠のミキにはかなり有利な展開です。

兄の容姿をブス、不細工といじっていく「ジャニーズに入りたい」という個人的には不快感の強いネタで面白さもそこまででしたが、漫才のテンポの良さやスキルの高さは十分感じられ638点と高得点を叩き出します。

特に上沼恵美子が98点を出し、ジャルジャルの88点との評価の落差が激しすぎました。個人的には10点の差が付くほどの差を感じることはできなかったため、これではミキを贔屓していると言われても仕方がないと思いました。

これは本当に蛇足ですが、ネタだけではなくお兄ちゃんの声も不快です。不快度で例えたらアメリカザリガニの柳原さんに匹敵するレベルです。

ミキの後のトム・ブラウンは順番的には不利な流れです。

「サザエさんの中島君が5人合体したらどうなるか?」という「中島ックス」というハイテンションかつ、あまりにシュールなネタで、これは面白いのか??面白くないのか??と、どっちに転ぶかわからない予想のできなさがあり、私はどちらかというと低評価かなと予想したのですが、予想外にも審査員受けが良く633点と高得点を叩き出します。

二人のキャラの強さとネタの意外性、あまり知られていないという強みが追い風になった感じがありましたが、まぐれ感も強く2度目は無いかなという感触を受けました。

その次は霜降り明星の登場。

ネタ後に残るものは何も無いが全体的なテンポの良さ、せいやのステージを大きく使う動きのあるボケ、粗品の異彩を放つセンスの良いワンフレーズツッコミとのコントラストとバランスが絶妙で、662点と最高得点を叩き出します。

ここでかまいたちの敗退が決定します。ポイントカードのネタは個人的には結構好きだったので残念でしたが、全体を比較してみるとオーソドックス過ぎて意外性があまり無かったのかもしれませんね。

最後は和牛の登場。

例年通り、全体を通してのネタの完成度が高いが笑いはちょっと少なめという「ゾンビに噛まれて感染したら」というネタで審査員から656点の高評価を得ます。

  1. 霜降り明星(662点)
  2. 和牛(656点)
  3. ジャルジャル(648点)

M1グランプリ2018の決勝は以上の3組がファイナリストに残りました。

M1グランプリ2018の決勝は審査員の好みによって運命が大きく左右される結果となりました。

特に上沼恵美子、立川志らくの2人の審査員の点数の振れ幅の大きさ、好みの激しさも際立っていたように思います。

ファイナリスト3組に食い込むには特に上沼恵美子と立川志らくにいかに受けるかどうかが1つのポイントだったように思います。

しかしあの辛い志らく師匠が面白くないといいつつも99点を付けたジャルジャルはすごかったですね。

M1グランプリ2018の感想 霜降り明星はつまらない?

M1グランプリ2018のファイナルの蓋を開けてみると霜降り明星4票、和牛3票で霜降り明星が優勝しました。

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審査員の票の内訳は以下のとおりです。

  • オール巨人:霜降り明星
  • 中川家礼二:霜降り明星
  • ナイツ塙:霜降り明星
  • 立川志らく:霜降り明星
  • サンドウィッチマン富澤:和牛
  • 松本人志:和牛
  • 上沼恵美子:和牛

こういったショーレース後には必ず話題に上がる「優勝したコンビはつまらなかったのになんで優勝?」「やらせ、出来レース違うの?」というような感想ですが、2018年のM1ファイナルは個人的には実力通りの順当な結果となったように思います。

ジャルジャルは内容は非常にくだらないんだけども掛け合いのテンポ、繰り返し&音感の面白さでグイグイ押していくスタイルです。

M1の決勝にこんなくだらない(いい意味で)ネタを投入してくるのか!という驚きが毎回あり、凄みを感じるのが魅力ですが、トップバッターという不利な条件が向かい風になりました。

毎年ジャルジャルを見ていて思うのですが、確かに面白いんだけれどもあまりに我が道を行き過ぎていて「審査員ウケを全く狙っていない感じ」がマイナスに働いているのではないかと少し思ってしまいました。

歴代のM1覇者を見ていると正統派が審査員には好まれる傾向が強いですが、ジャルジャルはその点、あまりに異質過ぎました。

3組のうち2組が正統派でどのコンビも甲乙つけがたい出来といった展開ではジャルジャルのような異質なコンビは一発で選択肢から外されます。

個人的な心情としてはジャルジャルには勝ってラストイヤーを飾って欲しいという願望はありましたが、M1という賞レースで勝てるスタイルではなかったのが残念です。

和牛は2本目のネタも全体的な完成度を見れば確かに高いけれども面白さがちょっと少なめという「またいつもの感じ」のネタを繰り出してきました。

和牛の場合は「いつもの感じ」と思われた時点でもう相当ヤバいのです。

水田は常に俺らが一番面白いというような自信を出しているように見えますが、和牛が毎年勝ちきれないのは予想を超えてくる意外性や瞬発的な面白さが足りていないからだと思います。

なかなか優勝できないという点で「笑い飯」と比較されることの多い和牛ですが、和牛には巧さや完成度の高さはあっても「笑い飯」ほどの瞬発力ある面白さが無いので毎年あと一歩で優勝できないのはまぁ仕方が無いなという感じです。

和牛は「巧さ」や「トータルの完成度の高さ」で毎年ファイナルまで残れる実力はあります。

結局、ファイナリストの相手次第でそこまで突き抜けて爆発力のあるコンビがファイナルに出てこない年に優勝すると予想しています。

これは運ですね。

その点では2017年のファイナルのとろサーモンは十分勝てる相手でしたが、それでも勝ちきれなかったという事が本当に悔やまれますね。

これも運ですが、和牛は圧倒的に運がないのが悲しいところです。

霜降り明星は1本目と同様、全体的なテンポの良さ、せいやのステージを大きく使う動きのあるボケ、粗品のセンスの良いワンフレーズツッコミと手数の多さで客席の笑いをかっさらい最後まで攻めきった感じがありました。

霜降り明星のネタが終わった瞬間、「ああ・・・今年のM1は霜降り明星が優勝したな」と確信しました。

漫才としての新しさやオリジナリティも感じる2本のネタだったので今年のファイナリストの中では頭1つ抜け出だしていた印象です。

しかし、霜降り明星は打ち上げ花火のような瞬発力が魅力ですね。

反面、後に残るものが全く無いのでこの部分がもしかすると「つまらない」と評価される理由かもしれません。

霜降り明星がもし決勝でトップバッターであれば結果はまた違っていたのかもしれません。

決勝で9番目のネタ順を引ける強運でトップ通過を果たし、ファイナルの3番目を取れるのは完全に実力です。

運も実力のうちと良く言いますが、まさしく今回のM1にふさわしい言葉だと思います。

M1グランプリ2018年を総括すれば、霜降り明星の優勝は順当な結果で、「霜降り明星がつまらない」ということは全く無いと個人的には思います。

ジャルジャルが好みの人には納得が行かない結果かもしれませんね。

インパクトで言えばジャルジャルが一番印象に残りますからね。

完成度高くて安定の和牛。毎年優勝を期待してしまうファンも多いでしょう。

いつも惜しい・・・運がないですね。

霜降り明星の面白さと勢いも、人気はあるんですよね。

結果には個人的に納得感はありましたが、

お笑いには審査員にも個人にも好みがあるんでなかなか難しいのですけれどね。

まとめと考察 プロスペクト理論から読み解くM1グランプリの攻略法

M1グランプリ2018は「特定の審査員に翻弄された印象の強い決勝」と、「順当な結果になったファイナル」、そして「優勝するには巧さよりも瞬発力が重要」といった印象を受けた大会でした。

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンは「人間が客観的な絶対量ではなく変化率に反応する」ことを実験で証明しました。

投資の世界では特に引用されることの多い「プロスペクト理論」です。

「唐突に何だ!お笑いと経済学は全く関係ないだろう!」と思われるかもしれませんが、

「変化率に反応するという人間の本質的な部分」にフォーカスしてM1グランプリを読み解くと、ここに攻略の鍵があるような気がします。

「変化率」に注目して重要な要素をリストアップしてみましょう。

  • ネタ順は後であればある程有利(運)
  • 直前のコンビはウケていない方が有利(運)
  • 直前のコンビと笑いの質、ネタの方向性が全く違う方が有利(運)
  • 巧さよりも瞬発力のある笑いが有利
  • 静から動へ変化の大きいネタが有利
  • 正統派スタイルが有利(奇抜すぎないことが重要)

こうやって書き出してみると運のウェイトがもの凄く大きいことに気づきます。

霜降り明星は決勝10組中9番目のネタ順で、直前が超シュールなネタを繰り出してきたトム・ブラウンでした(笑)

「変化率」という切り口で見るとトム・ブラウンは霜降り明星の単なる引き立て役に過ぎなかったと言えそうです。

そして霜降り明星は和牛よりも「笑いの瞬発力」がありました。

「巧さ」では勝っても「瞬発力」で劣る和牛が負けるべくして負けたと言い換えてもいいのでは無いかと思います。

漫才のスタイルで言えば、審査員に好まれる正統派のしゃべくり漫才の要素を踏まえながら瞬発力のある笑いを断続的に繰り出していくスタイルが有利と言えるかもしれません。

芸人がM1グランプリという特殊な賞レースを勝つためには「瞬発力のある笑い」とは何なのかということをとことん掘り下げていくことが重要なのではないかと思いました。

過去のM1のファイナリスト達のネタを「変化率」という視点から分析してみると多くのヒントが見つかると思います。

まぁ、言うは易しですが。

ファイナリストの常連で少し飽きられつつある和牛ですが、コンビ結成15年のラストイヤーまであと3回チャンスがあります。

2019年も和牛が優勝を狙うのであれば

  • 誰にも知られていない(意外性)
  • 例年の和牛にはない瞬発力のある笑いを断続的に繰り出す(意外性)

この2つの条件を満たすネタをファイナルに用意するとそこに勝機が生まれるでしょう。

大会終了直後の「M-1グランプリ2018 世界最速大反省会」に出演した水田は「生まれ変わらないと優勝できない」と述べたそうですが、それはまさにその通りで2019年のファイナルには本当に生まれ変わったかのようなネタを持ってこないと優勝は難しいでしょう。

しかし、今回優勝した霜降り明星の今後の活躍がどうなるのか楽しみですね!

この先は霜降り明星の二人はテレビでの露出が極端に増えることが予想されますが、主要な活躍の場である「ひな壇」でも瞬間、瞬間に面白いコメントができるかどうかという「瞬発力」が問われて来るのは間違いないでしょう。

霜降り明星についてはこちらもどうぞ

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