年に2回、春と秋にあるのがお彼岸です。
この時は親族が集まってお墓参りをしたり、法要を営んだりします。
自分の実家であれば両親から言われるままにしておけばいいですが、まだそれほど親しくない遠方の親族、特に結婚した女性が初めて夫の親族のお墓参りに行く時は気を使ってしまうものです。
最後にお墓参りをしてから時間が経っていると、お墓の掃除をして手を合わせて、という基本的な流れを理解しているくらいで正式な作法については自信がないという人がほとんどです。
まだすごく親しいわけではないから何か間違ったことをしていても教えてくれないかもしれない、義理の親族から失礼に思われたらどうしよう…なんて不安になっている人も多いのではないでしょうか。
この記事ではお彼岸のお墓参りについての基本的な知識とマナー、必要な持ち物や服装をまとめました。
これを読んで安心してお墓参りを迎えましょう。
もくじ
お彼岸にお墓参りをするのはなぜ?
お彼岸は春分の日と秋分の日の前後3日間に行われる仏教の行事で、その由来はサンスクリット語で「向こう岸に至る」を意味するパーラミーターにあるといわれています。
この「向こう岸に至る」とは悟りを開くことを意味していて、まだ悟りを開いていない人は此岸(しがん)、つまりこちら側の岸にいるといいます。
悟りを開いているかどうか、という意味で使われていたこの言葉は、日本に7世紀ごろに伝えられた浄土思想と結びつきます。
浄土思想では西に一切の煩悩から解放された極楽浄土があり、仏を信仰することで死後そこに行くことができると信じられていました。
死後極楽浄土に行った人は煩悩のない悟りを開いた=彼岸に至った人となり、同時に現世で生きている人は悟りを開いていない=此岸にいるものとなります。
そして極楽浄土のある真西に太陽が沈む春分と秋分の日を中心にした前後3日間を、現世と浄土が最も近づく日として先祖の供養を行うようになりました。
ちなみに海外の仏教信仰では彼岸の概念と浄土思想が結びついていないため、お彼岸にお墓参りをする風習は日本独自のものです。
お墓参りのマナーは?仏滅はダメ?
お墓参りは亡くなった人を偲び、供養するために行うものです。
家族など親しい人の間での行事ということもあり、お墓参りには明確なマナーというものは存在しません。
夫の家など自分の実家以外のお墓に参るのであれば、その家の人達に誤解されるような態度がなければ問題ないでしょう。
具体的には仏事にふさわしくない服装であったりお墓参りの一般的な手順を正しく行わないといったことがあると、周囲の人からはご先祖を敬う気持ちがないと判断されてしまう恐れがあります。
人への態度については常識の範囲内で失礼がなければいいので、特別な意識は必要ありません。
服装や持ち物、手順については下で詳しく書いていますので、そちらをご参考ください。
また仏滅や友引など六曜で縁起の悪い日を避ける人もいますが、六曜は仏教とは関係のないものなので、仏滅にお墓参りをすることには問題はありません。
ですが六曜自体は冠婚葬祭などの日を決めるのに今でも使われることから、年配の人ほど気にしている人が多いのも事実ですので、可能であれば日程を調整するなど配慮をしておくのがベターです。
お墓参りに行く時間帯に決まりはある?何か基準はある?
お墓参りは日中に行われるのが一般的です。
かつては日中でも午前中に行くものとされていましたが、現在はお墓と離れて住んでいることも多いことから午前中にこだわる必要はなくなっています。
日中に行われるのは、お墓参りではお墓やその周囲を掃除するので暗くなると掃除がしにくいことや、足元が見えにくくなるといった安全面を考えてのことです。
家によってはお寺にお参りしたり、彼岸会という法要に参加することもあるので、その場合はお寺や住職の都合にも合わせた時間帯に行くことになります。
行事のマナーとして行く時間帯に決まりはありませんので、掃除ができる時間帯であれば、後は当日の気温やその後の予定などの都合からお墓参りの時間を決めていいでしょう。
ただし開園時間が決まっているところでは、当然その時間に合わせる必要がありますので事前に確認しておきましょう。
お墓参りの持ち物は何を持っていくと良い?
お墓参りをする時、一般的に持っていくものはお供え物、花、掃除道具、数珠、線香やロウソクと火をつけるものです。
お彼岸のお供え物には何がいい?
お墓参りではお菓子や果物などがお供え物となりますが、お彼岸の場合は春はぼたもち、秋はおはぎをお供えするのが一般的です。
この両者は名前は違いますが、中身はどちらも同じで春は牡丹、秋は萩というそれぞれのお彼岸の季節に咲く花から命名されたそうです。
食べ物のお供えはお墓に放置すると動物に荒らされたりして汚れてしまうので、持ち帰って食べるのが基本です。
家族が苦手なものをお供えすると結局食べずに無駄になってしまうので、和菓子が苦手という時にはカステラなどの洋菓子にしたり、ジュースやビールなど缶入りの飲み物にするなど家の人が消費できるものから選びましょう。
もし食べ物でいいものが見つからなければ、お線香やロウソク、花でも結構です。
お彼岸のお供え物は3000円~5000円程度が大体の相場なので、あまり高いものを買う必要はありません。
また離れて住んでいる夫の実家に行く場合には、お供え物に熨斗(のし)をつけるのがマナーです。
和菓子店やデパートなどでは購入した時に「贈答用ですか?」と聞かれるのがほとんどなので、「お彼岸の贈答です」と答えれば熨斗をつけてくれます。
もし付けてくれなかった場合は自分で熨斗をつける必要があります。
関東なら白黒もしくは銀白、関西なら黄白の水引がついたもので「御供」または「御仏前」と表書きをします。
名前は家族なので苗字は書かず、ご主人の下の名前だけを書けば大丈夫です。
お彼岸にはどんな花を添える?またはどんな花が良い?
お墓を飾るお花はお墓参りの必需品です。
一般的には菊やカーネーション、コスモスやトルコキキョウ、リンドウなどが選ばれますが、これでなければダメという決まりはありません。
逆にお墓によくないとされる花はあるので、それらは避ける必要があります。
周りを傷つけるトゲのあるバラやアザミ、周囲にからみつくツルのあるスイートピー、毒があるヒガンバナやスイセンは仏前に供えるのには適さないとされています。
もし何にしていいかわからない、という時はお花屋さんに相談すれば適切なものを見繕ってくれます。
掃除道具は何を持っていけばいい?
お墓やその周囲をきれいにするために必要な掃除道具は、墓石をきれいにする雑巾やスポンジ、歯ブラシやたわし、水、生垣や植木をきれいにする植木ばさみ、ごみを捨てるためのごみ袋です。
ほうきやちりとり、水を入れる手桶は貸してくれるところも多いですが、もし貸出をしていないようであれば持っていきましょう。
同様に水場がなければお墓をきれいにするための水も持っていきます。
ペットボトルのものを持っていけばそのまま水を流せるので手桶は必要ありません。
その他お彼岸に必要なもの
お彼岸には数珠、線香、ロウソク、火をつけるものも必要です。
数珠は合掌する時に必要です。
宗派によって合掌の時の持ち方に違いがありますが、お墓参りの時は自分の宗派ですれば問題ありません。
自分の宗派が分からない人は事前に両親などに聞いて持ち方を確認しておきましょう。
線香はロウソクにつけた火を移す形が正しいとされていますので、線香とそれに火をつけるロウソク、ロウソクに火をつけるマッチやライターが必要です。
これらは墓地の近くにある売店で売っていることも多いのですが、そういったところがない場合は持っていきましょう。
お墓参りの手順とは?
ここではお墓参りの手順を具体的に紹介します。
まず到着したら、お寺に併設されている墓地の場合は先に本尊にお参りし、住職に挨拶します。
この時彼岸会の法要を行っていることもあるので、時間が許せばこちらにも参加します。
その後ほうきやちりとり、手桶など借りられるものを借ります。
もしお寺のない霊園であれば、管理事務所に行き必要なものを借りましょう。
次に水場があれば水を汲み、手を洗って清めた後お墓に向かいます。
お墓の前に着いたらまず合掌してからお墓の周りを掃除します。
雑草が生えていたら抜き、ほうきで落ち葉などをきれいにします。
生垣や植木がある時は植木ばさみで伸びた部分を切って形を整えましょう。
周囲をきれいにしたらお墓を掃除します。
墓石は水をかけ、雑巾やスポンジで汚れをふき取ります。
拭くだけで汚れが取れない時は歯ブラシやたわしなどを使っても構いませんが、強くこすると墓石に傷がつくこともあるので、力が入りすぎないように注意しましょう。
花立や香立ては立てるところにごみが入りやすいので、そこを重点的に掃除します。
墓石がきれいになったら、最後にきれいな水を打ち水して掃除は終わりです。
掃除が終わったら花立にお花を供え、水鉢に水を入れてからお供えものをします。
食べ物は箱などの包装から出して二つ折りした半紙の上に置くのが基本ですが、家によっては後で食べることを考えて包装のままお供えすることもあります。
どちらにするかはその家によるので、お供えする前に確認しておきましょう。
お供えができたら線香をあげ、故人と近い関係の人からお参りします。
お参りはまず墓石に水をかけた後、正面に立って数珠を持ち、頭を30度ほど傾けて合掌します。
この時お念仏を唱えるか、心の中でご先祖様に語り掛けるかは人それぞれなので、自分が一番良いと思う方法でお参りしてください。
全員分のお参りが終わったら、お墓参りは終了です。
ロウソクの火を消して掃除道具などの後片付けをして帰りしょう。
その際お花や線香はそのままで構いませんが、食べ物のお供えは必ず持ち帰るようにしましょう。
お墓参りで親戚の家に集まる場合は服装をどうすれば良い?
お彼岸のお墓参りは、家族の行事なので服装に決まりはなく普段着でいいことになっています。
しかし故人をしのぶ行事であるので、普段着と言ってもカジュアルすぎる服装は避けるべきでしょう。
派手な色や柄、肌の露出が多い服、サンダルなどは避けて落ち着いた服装を心がけて下さい。
またお墓参りに行く場合は、掃除をすることも考えて立ったりしゃがんだりするのが比較的苦にならない恰好にするのが適切です。
もし彼岸会などの法要がある場合遺族は喪服、それ以外の親族や友人はスーツなどの略礼装を着るのがマナーです。
まとめ
お彼岸のお墓参りについてマナーや時間、必要なもの、服装についてまとめました。
お墓参りは故人をしのぶ気持ちが一番大事ですが、夫の実家に行くような場合では親族に失礼がないようにするのも大切です。
離れて暮らしている場合は会うこと自体も年に何回もないことなので、こうした機会をきちんとこなすことで、より良い関係を築くことができるでしょう。
しっかり準備をして、家族の絆を深めてくださいね。
あなた以外にもお彼岸で帰省する人がいたらシェアして教えてあげましょう。